そして遺跡外の夜も更け。
軒先に赤提灯が下がる店。
「――っつーわけでさー、眼鏡と赤毛が人使い荒くって」
「それだけリンさんを信頼しているってことですよ」
「でもさ、マンホールはないでしょ、マンホール」
カウンターで管を巻く女が一人。
年の頃は二十半ばか。東洋人の顔付きは西洋人のそれより幼いため、正確なところはわからない。
北のほうの出身か、化粧気のない肌は白い。その頬だけは赤く染まり、目は心地よさに蕩けている。
今日も随分と冷える。外は寒風吹きすさぶ冬。
戸一枚隔てた店内には人の心をほぐす温もりがある。
女の前には空になった徳利が並んでいる。
相手をしているのはやはり東洋人らしき女。腰まで届く長い黒髪に、大きな瞳が印象的である。
カウンターの中で菜箸を握っている。この店の店員であろう。
時折手を伸ばし、カウンター越しに客に酌をする。
「こんな時間までいいんですか? またお仲間に怒られますよ」
「っと、そうだね。そろそろ帰んなきゃ。また来るわー」
「はい、まいど」
「……リン、酒臭いぞ」
「まぁまぁ、固いこと言わずに~」
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ENo.1199 佐々野 望さんお借りしました