あるところに一匹のうさぎさんがいました。
うさぎさんは道のそばでしくしくと泣いていました。
そこに、一升瓶と鮭とばをさげたおねえさんが通りがかりました。
おねえさんはすっかりできあがっていてフラフラでした。
千鳥足で足元も見ていなかったので、道端にうずくまるうさぎさんにつまずき、顔面から地面にダイブしました。
「いったぁぁ! どこの秘密結社の罠!?」
おねえさんはちょっとどころでなく飲みすぎていました。
「――うさぎ?」
ようやく足元のうさぎさんに気付いたようです。
うさぎさんはしくしくと泣いています。
おねえさんは顔面擦過傷だらけで血まみれです。
「ごめん! もしかして踏んじゃった?」
それでもアルコールパワーで痛くないようです。
顔面血だらけのまましゃがみこみ、うさぎさんの頭をなでなでします。
「痛いうさ・・・誰かが僕のしっぽを取ったぴょん・・・」
うさぎさんはくるりと背を向け、おねえさんにおしりを見せました。
そこにはあるはずのものがありませんでした。
ふさふさとした毛がゆるやかな曲面に生えそろっています。
丸くてかわいいしっぽは、最初からなかったかのようです。
「誰だか知らないけど酷いうさ・・・リンリンもそう思うぴょん?」
おねえさんは、「ひどい人もいるのねー」とか適当なことを言いながら、お酒を飲もうと一升瓶を持ちあげました。
けれど、一升瓶はありませんでした。
おねえさんの手にはいつの間にか、白くてふわふわの毛玉をつなげたヌンチャクが握られていました。
それはちょうど、うさぎのしっぽのような――
そしてうさぎさんの鋭い前歯がおねえさんの首筋を――
「――という微妙にホラーな初夢でした。あのうさぎ、どことなくノルくんに似てたのが気になる」
「いや、それ案外夢じゃないかもしれない」
「ん?」
(→以下、結果参照)