サザンクロス、と名乗った奴らはやけに派手に散っていった。
どこぞの漫画よろしく、吐血を撒き散らして倒れた薄幸の美青年は、美しいを通り越してなんだか滑稽に見えた。これが洋館や病院なら格好がついたのかもしれないけれど、残念ながらここは孤島の遺跡の中で、草いきれに満ちた平原のど真ん中だった。
観客もいない。カメラもない。長期間の探索で服も薄汚れている。ドラマチックに演出しようにも無理があった。
おまけに私たちは猫耳着用という間の抜けた装備だった。サザンクロスは最大級の演出を考えていたのかもしれないが、こんな間抜けな格好の連中に屠られたんだから、敵ながら同情を禁じえない。
しかし、こいつらもベルなんとかの兵隊だったのだろう。これまでの地味な制服連中とは一線を画した外見をしているが、他の連中同様、しつこかった。
「かったるい連中……」
ぼそりと呟いたら、
「血流しすぎて一人だけぶっ倒れたくせに」
クラストさんがこれ見よがしに言ってきた。
「私は体を張ってあんたらを守ったんですぅー」
「前衛で俺らを守っていたのはノルクの像」
「……」
「……」
クラストさんとそんないつも通りの睨み合いをしていたら、先行していたノルくんがひょこひょこと戻ってきた。
「二人とも何怖い顔してんの?」
「いや、別に」とクラストさん。
「麗しい友情の再確認をね」と私。
「仲良しでいいねー」
そんな様子を見てもあっさりそう言い放つメガネの悪魔もといノルくん。笑顔だけは明るいものだから、最早天然なんだか嫌味なんだかよくわからない。
「それより見て見て」
睨み合う私たちの眼前に、つるりとした物を差し出してきた。
魔法なんて使えないけれど、微弱ながら感じることはできる。
これがただ綺麗なだけの宝石ではないと。
この島の財宝を手に入れるためには七つの宝玉が必要だという。
そのうちの五つが今、ここにある。