「姉貴? ――うん、私。ひさしぶり。
零の代わりっていうか、後釜っていうか、ま、そんな感じで例の変な島に来てるんだけど。
話には聞いてたけど、本当に変なところだわ。
あんたらどこの映画から出てきたの?って言いたくなるようなのがたくさんいるんだもん。
外国って怖いね。マジで。
――大丈夫だって、心配しすぎ。姉貴らしくないよ。
それじゃまた電話するわ。またねー」
姉への連絡を終え、私は携帯電話を閉じた。
「で、どっちが“クラストさん”で、どっちが“ノルクさん”なわけ?」
私の前には二人の青年が立っていた。
一人は赤い長髪で、腕を組み、むっつりと黙って余所を向いている。もう一人は頭の良さそうな眼鏡で、やけににこやかにこちらを見ている。
「……ま、どっちがどっちでもいいわ」
人の名前を覚えるのは苦手だ。教えてもらっても忘れるし、覚えたところでなかなか顔と名前が一致しない。会社勤めをしていた時は、営業じゃなくて良かったと思ったくらい。
特に外国人名は苦手だ。なのに、よりによって二人とも横文字の名前だから困る。しばらくの間は間違えても勘弁してもらうしかない。これから先、同道するならそのうち覚えるだろう。
「まずはこの島を案内してもらいましょうか」
ジョシュアとか言う奴に貰った地図を開きつつ、私は二人を促す。
目の前には崩れかけた遺跡の入口がある。
さて鬼が出るか蛇が出るか――