私はどうなってしまうのだろう。
そう考えているだけでは何の解決にもならない。
選択肢は二つ。
己の変化を恐れ、この島を出るか。
変化も厭わず、探索を続行するか。
手元の携帯端末を操作して、これまで蓄積してきたデータを眺める。
凶暴化した動物の死骸の写真、見たこともない化物の咆哮の録音、誰かが発動した魔術の動画、島の植生のスケッチ、簡単な地図、それぞれに対する私のコメント。
データはこの一ヶ月でかなりの量となっていた。
もうこれで充分なのではないかと思う。
素人の私には検討つかないけれど、何かしらの専門家がこれを解析すれば、得るものがあるのではないだろうか。
「リンリン、眉間にしわ」
いつの間にかノルくんが正面にいた。女のような細く白い指で私の眉間をぐりぐりと突いてくる。
「あ、ごめん」
謝らなくてもいいのについ口をついて出た。
「クラストさんみたいな怖い顔になっちゃいますよ」
「それは嫌」
いつも冷静な仲間の顔を思い出して、また眉間にしわが寄った。
「ところで何を見てたの?」
「日記」
説明するのも面倒で、当たらずとも遠からじといった回答を返す。
「見せてー」
「ダメ」
「見ーせーてー」
「ダメったらダメ」
「どうしてー?」
「死体写真ばかりだから」
やはり当たらずとも、といった返事をしたら、ノルくんは汚物でも見るような目でこちらを見下して、そして去っていった。
後で弁解するほうが面倒だったかと思ったものの、それすらも厭う自分に苦い笑いが漏れた。