きんぴかのかがみをてにいれた!(ぺっぺれー)
と、脳内で再生された。
そのくらい、かがみさんが作ってくれた手鏡はゴージャスかつ神秘的だった。
いくら酒浸りの毎日であっても、私も腐っても女。こういった小物に興味がないわけがない。できたばかりの鏡面をまじまじと覗き込む。少し寝不足で荒れた肌の女が映りこんでいた。
「栄養足りてない。いかん」
頬を引っ張ったり目の下の隈をさすったりしていると、
「はい、おつかれさまー」
と、ノルくんが横からかっさらっていった。
「魔術使えないリンリンが持っていても仕方ない。僕が活用してあげよう」
白衣の胸を反らし、憎らしいくらいの素早さでどこかに走り去ってしまった。
反論する暇すらなかった。
「まあ、魔術的に使えないのは事実だけど」
誰もいなくなった通路で一人呟く。
魔法の類が使えないのは事実だけれど、使えないだけであって察することくらいはできる。たとえ素養が薄くても、この体には蒼凪の血が流れている。
霊的なものを感じ取れないほど鈍くはない。
「あの鏡、何だか嫌な気配したんだけどな……」
見た目は神々しいが、滑らかな鏡面から伝わってくるのは禍々しさに近いものだ。それこそ紫色の鏡も真っ青になるくらいの霊圧。思い出して身震いする。
まあノルくんなら大丈夫だろう。彼は眼鏡で白衣の悪魔だ。魔法使うけど科学の子だ。どんな不可思議な事象も理屈でねじ伏せてくれる、と思う。
こんな私でも、あの鏡が秘めた力が強大なことくらいわかる。たとえ霊質が負の方面でも利用したもん勝ちだ。
「……一応対策だけ聞いておくか」
それでもやはり不安は拭えず、私は相談相手――もう一人の仲間であるクラさんを探して通路の先へと進んでいった。