トゥルルルル トゥルルルル
ピッ
「はい、蒼凪で――」
『この、バカ壱哉ァー!!』
「と、十和姉……?」
『あんた島に行ったんだって? 何勝手なことしてんのよ! 零は私かメイちゃんにって要請してたのよ!?』
「でも十和姉、年末は忙しいよね?」
『それはそうだけど……零はこのこと知ってんの?』
「……知りません」
『知ったらあの子、怒るんじゃないの。あんた嫌われるよ』
「う……それはイヤだなぁ……」
『勝手なことしたあんたが悪いんだからね。しばらく口きいてもらえないくらいは覚悟しときなさいよ』
「……ハイ、了解しました」
『まぁ、でも無職で暇してるアンタが行くほうが理にはかなってるんだけどね。どうしても私は手が空かないし、メイちゃんだって仕事あるし』
「僕は兎少女にすら負けてるのか……」
『何か言った?』
「いえ、何も」
『今回の件、零には適当に言っておくわ』
「ハイ、よろしくお願いします」
『残りの説教は帰ってきてからね』
「……ハイ、謹んでお受けします」
『それじゃ、また――』
「あ、ちょっと待って」
『何よ』
「零が隼人って人にクリスマスプレゼントを用意していたみたいなんだけど、僕から渡してもいいものかな」
『誰それ。男?』
「こっちで知り合った人みたいなんだ」
『ふーん。どんなプレゼント?』
「手編みのマフラー。僕が貰ったのと色違い」
『手編みってまたわかりやすくベタだねー。別にいいんじゃないの? 零だって年頃でしょ。気になる人の一人や二人いるわよ。父親やってると心配だろうけど、あの子の気持ち、無駄にしちゃダメよ』
「三十歳、男、目付き悪くて見た目ヤクザ」
『……ちゃんと渡しなさいよ』