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Day04 -interlude

続き
 情報端末を操作して、撮った写真とデータを確認する。島を象ったアイコンをタッチすると、データベース画面に切り替わった。撮った写真と、そこから算出した実物のサイズ、音声再生ボタンが画面に一纏めに表示された。画面の最上段には、識別用と思われるアルファベットと数字を組み合わせたIDが振られていた。
 下のほうには余白が続いている。テキストボックスになっているところを見ると、気付いたことを入力しろということらしい。
 ならば早速と文字を入れてみる。画面には緑色の顔が表示されている。

 通称歩行雑草。
 人間に似た容姿であるが、動物ではなく植物に分類される模様。
 現在確認した個体は全て男性型。女性型が存在するかどうかは不明。
 たんぱく質なんてなさそうなのにやたらと筋肉質でキモイ。

 これでいい。入力完了のボタンを押す。
 画面の最下段の最終更新日時が更新される。日時は日本時間を基準としている。日本は今真夜中だ。けれどまったく眠くないのは、時差に慣れてしまったからか、この島の時の流れが外界とは少し異なるからか。
 この遺跡島の時間を設定してもよかったが、グリニッジのような標準時を示す施設がないから正確な時がわからない。太陽から大体の時刻を割り出すなんてこともできたけれど、あえてしなかった。そんなことをする必要もないだろう。「何日何時の何処で」なんていう約束の仕方は、この島ではしないからだ。
 仲間は常に目が届くところにいるし、取引だってその場で全部済ませてしまう。即断即決、わかりやすい。
 この島は自由だ。時も、規則も、人を縛らない。
 そんなところでは社会も何も形成できないだろうと思うが、ごく自然とそれっぽいものができていた。そこかしこで取引を呼びかける声がおこり、対価が支払われる。もちろん同じ招待客を襲う輩もいないではないが、それは遺跡内だけのことで、外では彼らも大人しくしている。
 緩いながらも当たり前の常識が通じる、招待客たちの社会。
 もちろんそれは招待客の殆どは文明圏から来ているからで、何かを要求するには対価が必要と認識しているからだ。たとえ対価不要と言われたら、その親切心に礼を言う。礼を言わないなんていう無作法者はさほど目に付かない。
 この不思議な社会はなんと呼べばいいのだろう。文化人類学者や社会学者が興味を示しそうだ。
 なんとなく、端末付属のテキストエディタにそんなことをメモして、“遺跡島の社会”とラベリングして保存した。メモをどうするかなんてことは考えず、とりあえず記録する。
 今の私は調査員であり、観察者であり、記録者だ。
 蒼凪からの要望は島の調査であり、百瀬からの依頼は生態系の調査。目に付くもの全てをこの情報端末に収めるのが仕事。記録を解析し、活かすのはまた別の人の仕事。そういう難しいことは学者さんがやればいい。
 そして私は少し考え、手元にあるどうしようもない物体も写真に収めた。 
 本当にどうしようもないそれの記録欄には、どうしようもないとしか書けなかった。

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