お父さんへ
お元気ですか。
お手紙ではおひさしぶりです。
しばらく十和子さんに携帯で連絡するばかりで、しばらくお手紙を書いていませんでした。
ごめんね。
そちらはもう梅雨に入ったと思います。
こちらは遺跡の中なので、いまひとつ季節感がありません。
春になれば花が咲くし、冬になれば落ち葉が積もると思うんだけど、日本のようにはっきりとした四季ではないようです。
砂漠はいつも暑いし、山はいつでも緑だし。
人口建造物の中に砂漠や山がある時点でおかしいんだけどね。
それでも最近は少し湿っぽいかな。
水の守護者のところに向かっているからかな?
今、私はみなさんと離れて一人で行動しています。
というのも、私だけ水の宝玉を持っていないからです。
みなさんは宝玉三つ持っていて、私は二つだけなの。
一人だけリソース少なくて足手まといになるのは嫌なので、水の宝玉を取りに行くことにしました。
本当のことを言うと、一人では行動したくありません。
広くて薄暗い回廊を独りで無言で歩いていると、とても不安になります。
音楽でも聴けば気が紛れるのかもしれません。
だけど突然の襲来のことを考えると、周りの音が聞こえないのは不利です。
誰かと一緒にいればおしゃべりもできるのにね。
こんなに心細くなったのは、鬼城さんたちと別に行動することが決まった日以来です。
鬼城さんやエリカさんたちは私なら大丈夫と言って送り出してくれました。
あの日に比べれば、私も少しは戦うことに慣れたかもしれません。
だけどね、やっぱり怖いんだ。
自分の身を守るためとは言え、誰かを傷つけるって怖いことだよね。
そして、それに慣れちゃう自分はもっと怖いよね。
そんなこと言ったら他のみなさんには笑われるかもしれない。
お父さんならこの気持ち、わかってくれるかな?
ん、湿っぽい話してごめんなさい。
雨続きの中、体調を崩したりしていませんか?
夏風邪はたちが悪いので気をつけてください。
それと、変なもの食べたりしないでね。
私はもう少しで水の守護者のところに辿り着きます。
できれば話し合いで済ませたいな。
無事帰れたらまたお手紙します。
ではまた。