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父と子の往復書簡・69日目

時計 2009/01/22

「また二人、ですか」
 零が眉根を寄せる。
 彼女は木の幹の影から顔を半分だけ覗かせている。その姿に少年は溜息をつく。幾度目になるかわからない。
「僕と一緒が嫌ならいいんですよ」
「いや、その、菅原さんが嫌なんじゃなくて」
 大きな瞳が泳ぐ。外の世界では二度の冬が過ぎ、この島の時間でも二ヶ月を超えている。
 年の頃は変わらない。自分はそれほど威圧感のある容姿をしているとも思わない。ただ、性別が違うだけだ。
 なのに、零は何に怯えているというのだ。
「僕じゃなくて、まぐろさんやクラストさんに代わりましょうか?」
「そ、それは困りますっ」
 まったく予想された返事だ。あの二人は菅原よりも更に上背があり、体格がいい。零が近付いているところなど、見たことがない。
「それじゃ諦めてください。ゼロさんは僕が守りますから」
 零が豆鉄砲でも食らったような顔をしていた。それに気付いてしまったと思う。これでは誤解を呼びかねない。
「あの、そういう意味じゃなくてですね」
 慌てて言い繕う。
「僕の代理を用意します。エドさんとまた合流するまではそいつに任せますから」
 女の子の扱いは大変だ。内心でもう一度溜息をついた。