Day4 /Jack
- 2011/10/26 01:00
- Category: 日記ログ::ジャック
男は全てを失った。
全てを奪われ、その身体以外の何もかもが消え去った。
本当の絶望の中に在れば涙さえも失うことを知った。
そんな男の姿を見て、略奪者はせせら笑う。
新月の夜、女王不在の闇の空を背負い、かつて男の目に宿っていた光が男自身を見下ろす。
地に這いつくばる無様な姿がアメジストの瞳に映り込んでいた。
冷やかな色をしている。そんな目で人を見たことなどなかった。
嫌でも認めざるを得ない。かつて己の物だった双眸はもはや人の物だ。
静かな夜だ。
暗闇は惨劇を覆い隠す優しさと、救いの手を見失わせる残酷さを持ち合わせる。
慟哭は柔らかな闇に飲み込まれ、祈りは風がさらっていく。
何故殺さなかった、と男が問うと、死は救済であり解放である、と相手が答えた。
そう簡単に楽になってもらってはつまらない、と一際甲高い声で笑う。
全てを失った貴方に。
そいつはそう言った。
全てを失った貴方に、たった一つだけ贈り物をしましょう。
そして細い指が伸びてきて。
そこで記憶が途絶えている。