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Day4 /Jack

 男は全てを失った。
 全てを奪われ、その身体以外の何もかもが消え去った。 
 本当の絶望の中に在れば涙さえも失うことを知った。

 そんな男の姿を見て、略奪者はせせら笑う。
 新月の夜、女王不在の闇の空を背負い、かつて男の目に宿っていた光が男自身を見下ろす。
 地に這いつくばる無様な姿がアメジストの瞳に映り込んでいた。

 冷やかな色をしている。そんな目で人を見たことなどなかった。
 嫌でも認めざるを得ない。かつて己の物だった双眸はもはや人の物だ。

 静かな夜だ。
 暗闇は惨劇を覆い隠す優しさと、救いの手を見失わせる残酷さを持ち合わせる。
 慟哭は柔らかな闇に飲み込まれ、祈りは風がさらっていく。

 何故殺さなかった、と男が問うと、死は救済であり解放である、と相手が答えた。
 そう簡単に楽になってもらってはつまらない、と一際甲高い声で笑う。

 全てを失った貴方に。
 そいつはそう言った。
 全てを失った貴方に、たった一つだけ贈り物をしましょう。

 そして細い指が伸びてきて。


 そこで記憶が途絶えている。