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Day75

暑すぎ飲みすぎでぼんやりしてたら本を抱えたお子様が現れた。

弱い物いじめは忍びないとクラストさんに相談したら、この島は見た目で判断してはいけないと言われた。

そうでした。
ちょっと気合入れなおしてがんばる。


Day73

外に出た。

お腹空いて耐えられないって言ったら許可してくれた。

私だけ外に戻ってもよかったんだけど、あの二人も一緒に出てきた。
ったく、あのまま残っていれば色々おいしくてよかったのに。

それとも、ここまで来たら一蓮托生ってやつ?

とりあえずコンビニ行って酒買ってこようかな。


Day57

クリスマスってーのはご馳走食べておいしいお酒を飲んでバカ騒ぎをする日である。
それがたった一人であっても、だ。

で、日も変わって落ち着いた頃に明石家サンタを見るんだよ。

それがセオリーってやつ。

Day51

「おい、リン。ハロウィンは仮装する日なんだよな?」
 ちょっと不機嫌そうなクラストさんの声。
「そうだよ。何か問題でも?」
「何故性別が変わってるんだ」
 内股になり、両腕で必死に前を覆っている。それでもふくよかな胸とあらわになった腿は隠しきれず、艶やかなラインをこちらに見せていた。
 いつもより丸くなった面立ちを赤く染めて必死に抗議してくるクラストさん。
 どこからどう見ても女優級の美女である。
「だってさー、ただ女装するだけじゃつまんないじゃん? 面白い薬もらったからついでに使っちゃった」
 と言って私は小さな瓶を振って見せた。透明な瓶底には薄く黒い液体が残っていたが、こぼれることはなかった。
「そんな怪しい薬を……!」
「そのうち戻るよ。気にしない気にしない」
 ケラケラ笑うと、クラストさんが掴みかからんと腕を伸ばしてきた。しかし、慣れないタイトドレスとヒールの靴では思うように動けない。バランスを崩してその場に膝をつく。
「美人ですよ、クラストさん」
 含むように笑った私を、涙目で睨みつけてくる。いつもやられっぱなしだからちょっと気持ちがいい。
「ノルクはどうした?」
「ノルくんは……」
 言いかけたところで、「リンリーン! クラストさーん」と明るい声が割ってきた。そして黒い影が私たちの間に割り込む。
「じゃーん! どう、似合ってる?」
 左手は腰に、右手は頭に。しなをつくってばっちりポーズを決めた影はノルくんだった。クラストさんほどではないが、やはり胸周りが露出した魔女のようなコスチュームだ。もちろん体付きは女の物になっていた。
「ねーねー、どう? 僕美人?」
 この理系メガネ、ノリノリである。その姿を見たクラストさん、外れんばかりに大顎を開けている。
「恥ずかしがらずにこのくらい吹っ切れないと楽しめないよー? ねー」
「ねー」
 私とノルくんでハイタッチ。
 呆気にとられたクラストさんが現実を受け入れ、立ち上がったのはそれから小一時間経ってからだった。

Day44

 屍。

 そうとしか形容できない姿だった。
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Day43

 私はどうなってしまうのだろう。

 そう考えているだけでは何の解決にもならない。
 選択肢は二つ。

 己の変化を恐れ、この島を出るか。
 変化も厭わず、探索を続行するか。
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Day42

 腰を落とし、まっすぐに拳を突き出す。
 宙を裂く鋭い音。速度はこの島に来た当初より上がっている。
 仮想敵の鳩尾を突いたところで拳を下げ、連なる動きで右足を高く上げて円を描き、首を狩る。右足が下がるとともに体も縮め、両手は地面。右足は地に着くことなく、そのままの勢いで相手の足を払う。
 透明な敵は地面に崩れる。その鳩尾へ間髪入れず拳を叩きこむ。もちろん手応えはない。体を起こして深く息を吸い、吐く。体を整えてそれで終わり。 
 以前から体に染み付いた一連の動きながら、速度も破壊力もこの数日で跳ね上がっている。腕を伸ばして滑らかな筋肉を意識する。無駄な動きが減り、最速最良の状態への移行が進行している。
 鈍っていた体が慣れてきたというだけならば良かったかもしれない。しかしこの数日の変化は成長というには異常な速さだ。しかも一番良く動き、良く伸びた十代の頃を凌ぐ勢いだ。高校を卒業した後は適当に維持するだけの運動しかしていなかったはずなのに。私の体は緩やかに、しかし確実に衰えていたはずなのに。
 ノルくんが言っていた「最適化」という言葉が頭から離れない。

 私はどうなってしまうのだろう。

Day41

 酔っ払いの拳と書いて、酔拳と読む。
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Day40

「……何なの、あのちびっこ」
 黒い魔道衣がひらめいて、見上げた空の彼方へ飛んでいった。以前にも出会ったことはあったが、相変わらず行動がよくわからない。味方でないことは明白だが、私たちを襲ってくる必然性もわからない。
 この島は本当にわからないことだらけだ。▽Read More

Day39

「いだいいだいいだい! 痛い! かゆい!」
「大した日焼け対策もしないで水着で遊んでいるからですよ」
「だってー」
「だっても何もありません」
「うあああぺちぺち叩くなあああ!」
「これはもう日焼けじゃなくて火傷ですね」
「こう、魔法でぱーっと治せない?」
「医学も専門の人ならすぐに治せそうだけど、僕は専門外です」
「えー」
「まぐろさんならすぐに治せると思いますよ」
「……鱗張られそうでイヤ」
「……」
「……」
「……カーマインローションで冷やすといいですよ」
「背中塗ってー」
「郁葉さんかエリザさんに頼んでください」

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